誰のためのウェブユーザビリティ?

巷でユーザビリティの話題を良く聞く。猫も杓子も「ユーザビリティ」だ。しかし、それは誰に標準を合わせているのか?以前、ウェブデザイナー君と話した。「僕たちは、マウスの距離まで計算しているんだよ」と。しかし、それ以前の問題があるのではないだろうか。

例えば、街を歩いている。ナンパをしようと向こうから歩いている女の子を虎視眈々と狙うオトコノコ。この角度から声をかければ僕の一番かっこいい部分が見えるはず。うん、胸ポケットから見えるハンカチの角度も最高。もちろんバッグはブランド物。

で、声をかけるのだ。「ハロー」ところが、彼女に英語がまったく通じない。イイオトコがきたから一生懸命彼の言うことを理解しようとする女の子。

「ハローハロー」必死で話しかける彼。伝わらない・・・・

これとまったく同じ間違いをウェブデザイナーが犯している。確かに見た目はかっこいいかもしれない、しかし、何を言っているかわからない。お客様は一生懸命理解して、どうにかしてそのかっこいい彼に近づこうとするのに、彼自身が自分の言語に縛られてしまい、相手に全然伝わらない・・・「オレは一生懸命伝えているぞー!」と「あなた」は思っていても、それを評価するのはお客様であることを、大半のウェブサイトが忘れてしまっているようだ。

当教室の初心者のウェブサーファーの呟き。「インターネットって面白いけど難しいわよね」そう、若者の視点で作成されたウェブサイトは初心者、特に高齢者にとっては理解できない代物なのだ。

だからといって「高齢者とはこうあるべきだ!」というウェブはそっくりそのまま宇宙に捨てに行ったほうが良いだろう。というのも、今の高齢者と呼ばれる、いわゆるニューシニア世代は日本のバブルの絶頂期を20代後半から30代前半過ごしている方たちだ。仕事もバリバリ、年金もバッチし、そういう方たちはサザエさんの波平さんのような生活をしてない。(もちろん、中にはいますが)

彼らは介護保険の導入など、そういうニュースを見るたびに自分の中の恐怖と戦っている。自分は絶対に若くいよう、と意識していることはさまざまな調査結果が「ニューシニア層は自分が実年齢より若く思っていると回答している」と発表していることからも解る。

だが!実際に、年を取っていくのを感じているのだ。目は確実にかすんでいくし、前みたいに水を飲むように新しいことを覚えるのも難しくなってきている。実年齢より若いと思ってはいても、昔と同じではないことを知っているのは誰よりもご本人だ。ですから、「シニアマーケット調査!」などと銘打った調査に「実年齢より若い」フムフムと思っていると後で痛い目に合う。

結局、周りの評判だけで相手にラブレターを渡そうとしているのと一緒だ。彼女に届く言葉が用意されていない。ユーザビリティ以前の問題だ。そのウェブサイトは、若い人を対象にしているのか。ニューシニアをターゲットにしているのか。猫も杓子もユーザビリティというならば、カッコイイコトを言う前に誰に自分のラブレターを渡したいか考えるのが先だ。

そして、その相手に届く言葉を使おう。言葉なんて伝わらなかったらただの雑音なのだから。それが、ユーザビリティを語るための第一条件だ。ユーザビリティは誰のために?

(2003年2月15日)