パソコン教室にいると、「わからないから押すのが怖い」という声をよく聞く。若い人は、違ったら戻せばいいと簡単に言うけれども。間違えても元に戻すことができるということが画面から伝えられないと、使いやすさを著しく損なわせるんだろうな。
— satojunさん (@stj064) 2013年5月24日
こちらのTweetは、先日私が教室でのつぶやきを耳にして書いたものです。
この生徒さん、テキストを見ながらWordで文書を作る練習をしていたのですが、しきりに「押すのが怖い」「壊しちゃうかもしれない」と口にして、なかなか先に進んでいないようでした。それこそWordの「リボンメニュー」部分をクリックするだけでも、そうとう躊躇しています。
後ろからパソコンの得意な若いスタッフ(女の子)が来て、「大丈夫です、怖くないです。それで壊れることはありませんから。」と何度かお伝えしたのですが、本人はその後も不安感を消せなかった様子…。
「トライ&エラー」が気兼ねなくできるかどうかが分かれ道
以前、別ブログでこんな記事を書いたこともありました。
アイコンは「怖くて押せない」
つい先日、某社社長のインタビューで「すべてをアイコン化しているので直感的なんです」などという発言がありましたが、実際アイコンを初めて見た人は、それが何を意味しているのかわかりません。特に今回のようなIT初心者、シニア層にとっては、わからないものは「怖くて押せない」んです。
先ほどのリンク先には「慣れれば大丈夫」と続けて書いてありますが、怖くて押せないものに対して、いつ慣れることができるのでしょうか?
このあたりのボタンやリンクの表現については、「適切なラベリング」に勝るものはないと思っています。変にカッコつけず、テキストで表現すればいいんです。
どんな分野でも、新しいスキルの習得には、「トライ&エラー」の工程は欠かせません。いくらテキストを読んでも、人の話を聞いても、実際に自分で手を動かして様々な失敗をしてみるまでは、本当に使えるスキルは身につきません。
パソコンやスマートフォンの扱い方によく見られるように、ITに親しみがある若い人などは、自分でいろいろと試行錯誤してみる「クセ」が自然とついている場合が多いです。「ここまでやっても大丈夫」「まずかったら戻せばいい」という暗黙の了解に基づいて、気兼ねなくトライ&エラーを繰り返して新しい技術をマスターしてしまいます。
一方でITに不慣れなシニア層の方々の中には、「パソコンが壊れる」「データが消える」というように失敗結果を過大評価し、こうした行動を起こすことを「怖い」と思ってしまうことが多くあるようです。そのため、スキルの習得に必要なトライ&エラーの回数が絶対的に足りなくなってしまいます。
よいインタフェースは、「予見可能」で「可逆的」である
こうした「怖がり」ユーザーを受け入れるために大切なのは、インタフェースデザインにおいて、行動の結果が「予測しやすい」ことと、「可逆的」であることです。
そのデザインやUIを見ただけで、「これを押したら多分こういう結果になるだろう」と思わすことができるかどうかが勝負です。実は意外とアイコンだけでは伝わりません。適切なラベリングで補足することは非常に重要です。
可逆性に関して言えば、例えばネット上での商品購入において、どこまではキャンセルができて、どこから先は取り返しがつかないのか、明確に伝わるような書き方ができると望ましいです。
またこのブログでも度々紹介している「モードレス・ユーザーインターフェース」でも、システムの「可逆性」は使いやすさに大きく影響する重要な概念の一つとして紹介されています。
【参考記事】
・ソシオメディア | モードレス・ユーザーインターフェース
あなたが今デザインしているインタフェースは、「予見可能」で「可逆的」でしょうか?
「押すのが怖い」と言われないように、メニューやアクションボタンのラベリング、申込みプロセスの進行説明の仕方など、機会があればぜひ見直してみてください。