”かんたん”の提供者とユーザーの温度差

取材写真

先日、アルジャジーラの取材を受けた。(上は取材中の写真です)

お題は
「機械は簡単になったか」
というものだった。

これは、答えるのがなかなか難しい。
思わず、「むむむ」となった。

簡単とは何か?

「簡単」という言葉の定義は難しい。

誰でもかんたんに使えます!というパッケージを見ると
「あたしって、天然って言われますっ☆」と
言っている人とかぶる。

「わたし、親切です」というのにも似ているかもしれない。

自分で言ってしまうと、違和感が生じる自己評価の類である。

しかし、多くのパッケージで「かんたん」を謳う。なぜなら、売れるから。
消費者は、「かんたん」という文字を見て「簡単」と思いこむ。

参考)「初心者向け製品」の抱える2つの課題

ユーザーの求める「かんたん」は、簡単ではない

一つ具体例を。
某氏は75歳。
入力はできるが、保存などの操作はよく解っていない。
ドラッグ、などの言葉も、少し厳しい。ドラッグ操作の時に、マウスを見失ったりする。
一般的な初心者である。

先日、氏が仰った。
「今日は医療費の管理をしたい。娘に聞いたら「エクセルがいい」と言われた。」

氏はエクセルを見たことも、触ったこともない。

エクセルの基礎をとりあえず勉強しませんか、と問うと
「エクセルをこれから使うわけじゃないから、これだけできればいい」と仰る。

「だから基礎は要らない。これが作れればいいんだよ。
こんな表、かんたんでしょ?」

仕方がないので、
入力だけしていただいて、体裁を整えたりするのは合間を見て私がやった。

その操作を見て某氏がひと言。

「なんでパソコンはもっとかんたんにならないんだろう。
かんたんに作れますとか、メーカーは言うけど、あんなの嘘だよね。
年寄りばかりになるんだから、もっとかんたんになればいいのに」

それを聞いて、ものすごく、モヤモヤした。
「かんたん」以上を使用としていることをユーザーは分かっていない。
やりたいことが、できることしか「かんたん」は認められない。

「かんたん」の温度差

冒頭のアルジャジーラの取材に対して、私はこう回答した。

確かに、簡単にはなっている。
ただし、メーカーとユーザーの「かんたん」の意味のとらえ方が違う。

例えば、
メーカーは、お湯を注ぐだけで食べられるカップラーメンのようなものを「簡単」と考え、
ユーザーは、手作りの肉じゃがを作るのに、かんたんにじゃが芋の皮がむけることを
「簡単にできればいいのに」と思っている。
もしくは、もう、皮がむいてあるじゃが芋が用意されていれば「簡単」だ。

ユーザーの「かんたん」は察してくれることを求めている?

取材の後、「かんたん」というモヤモヤしたものについて、ずっと考えていた。

ユーザーが求めている「かんたん」は、
もしかして、「面倒くさい」「難しい」を誰かが代行してくれるけど、
いいところは自分が持っていきたいという事なのではないか?

「お湯注ぐだけなんて料理って言わない。
彼に手作りの料理をふるまいたいけど皮をむくのは難しい」

自分で作った、頑張ったって見せたいけど
自分の困っているところは察して、先回りして直しておいてよ、的な。

ボタンの数が少ないのが「かんたん」なのではなく、
機能が少ないのが「かんたん」なのでもなく、

自分のやりたいことを機械が察して、かっこよく、悩まず、できるのが「かんたん」なのではないだろうか。

レンジでチンは、ユーザーが求めている「かんたん」なのか

メーカーの提供する簡単は、ひな形を利用した、いわば「レンチン」的な「かんたん」であると思う。

基本的な部分は、レンジでチン的な機能が求められている。
やりたいことが、その製品やサービスの根本の部分の場合、
操作手数は少なく、すぐにできるのが良い。

「お腹を満たす」ことが目的ならば、インスタント食品で十分だ。
ゴールは1つで、操作に迷わないかどうかだけを観察すればよい。

しかし、その先に行くなら、「ちょっとした達成感」や「なんちゃって出来る感」も必要だ。

たとえば、「かんたん手料理キット」の場合、
魚をさばくとかは求められていない。
用意された食材を(皮はむき済み)数回包丁で切って、
付属のたれを混ぜて煮込んでできあがり。

これで、目的である
「最近、料理が趣味なんです。まだはじめたばかりだけど。」
という発言ができる。

ユーザーのゴールは何だ?

だから、「かんたん」を名乗るためには、
ユーザーを知り、そして、彼らの目的・ゴールを設定しなくてはいけない。

アンケートで意見の大枠を掴み、
そこからユーザーに対してヒアリングや観察を行い
ニーズや不満を聞きだし、
ゴールを設計して、
ユーザーの「かんたん」に対応できるか何度かテストを行うことで
製品を作る。

そうしたら、ユーザーに対して「かんたんです!」と言えて、
ユーザーも「それはかんたんだと思う」と言えるのではないだろうか。

そして、ユーザーにも歩み寄ってほしい

ここが課題なんですよね。
教室という場を通じて、一応ユーザーさんには「かんたん」でないことの達成感などをお伝えしているつもりですが、なかなか難しい。

・今やりたいことを「かんたん」と決めつけない
・今の自分のスキルを認識する
・そのスキルで簡単かどうかを判断する力を持つ
・簡単が進みすぎると何もできなくなるので、簡単じゃない事を楽しむ
・かんたんの先にある「ワクワク」を切望しよう。工夫しよう。
 簡単で出来上がった結果に満足しない。

こんなことを、ユーザー側に希望しながら
今日も、高齢者にパソコンを教えている。

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