シニアのユーザーテストを観察していると、トップページの多くの領域を占拠する「大型バナー」や、気合いを入れてデザインされた「グローバルメニュー」が全く機能していないシーンによく遭遇します。

こうしたユーザーは、代わりに次のような"地味"な機能を好んで使っているのです。

・サイトマップ
・サイト内検索
・よくある質問

これは、ITリテラシが少し高めの"そこそこ使える"シニアユーザーで特に顕著に見られる行動です。普段からウェブサイトを利用しているうちに、「何かわからないことがあるときには、ここを見ればいいんだ」と学習してきたようです。

しかしウェブ制作側としては、こうした地味な機能には、あまり制作リソースをかけていないのではないでしょうか?

今回はこれら3つの機能を『地味ナビ三兄弟』と命名し、ウェブが"そこそこ使える"シニア向けに最低限対応しておきたい施策についてまとめてみます。

 

「サイトマップ」への導線はヘッダー内に設置する

シニアユーザーに「サイトマップ」が好まれる理由として、以下の点が考えられます。

・余計な装飾がないので見やすい
・すべてのコンテンツが一覧できる

グローバルメニューは、ラベルに相当気を遣わないと、その下層にどんなコンテンツが含まれているのかパッとわかりにくいという欠点があります。多くのシニアユーザーは、ラベルから内容を類推する精度が高くありませんし、コンテンツを探して何度もページを行き来することを非常に嫌います。

そのため、下層コンテンツまで一覧で確認できるサイトマップは「わかりやすい」とされ、そこで探している情報をうまく見つけた経験を積むほど利用率が高くなるのです。

 

こうして頼りにされるサイトマップですが、サイトによってはリンクをヘッダーに置いていなかったり、最近ではフッターがサイトマップ代わりになっているサイトも増えてきています。

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しかし「シニアはスクロールしない」の格言通り、なにか情報を探す際にページ下部まできっちりチェックするというシニアは少ないので、サイトマップへの導線はできる限りヘッダー内のすぐ見つかる位置に確保することをおすすめします。

 

「サイト内検索結果」を読みやすくする

いろいろなページを行ったり来たりしながら情報を探す行動は、物理的な操作の負荷に加え、認知的な負荷もかかります。こうした作業にうんざりしているシニアは、ナビゲーション代わりとして「サイト内検索」を積極的に利用する傾向があります。

しかし検索結果の見せ方に配慮が足りないと、自分の探しているページを見つけるのに非常に苦労してしまいます。

サイト内検索結果を見やすくするためには、以下の点に気をつけたいところです。

・内容が想像しやすいページタイトルをつける
・タイトル、説明文ともに読みやすい文字の大きさと行間を確保する
・キーワードをハイライトする

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キヤノンのサイトは全体としてタブレット対応が進んでいるせいもあり、サイト内検索結果はかなりの余裕を持ってレイアウトされています。これだけ文字が大きく、行間や余白も確保されていると、シニアでもストレスなく"ナビゲーション代わりに"利用することができます。

 

「サイト内検索フォーム」にはサジェスト機能をつける

サイト内に該当する情報があるのにも関わらず、検索キーワードの打ち間違いに気づかない、余分なワードを続けて入れてしまう等の問題により、検索結果がゼロ件になってしまうシーンをよく見かけます。

しかも、ユーザー自身はなぜそうなったのかを理解できないため、情報はそこには載っていないのだと感じて離脱してしまいます。

こうした表記揺れやキーワードの想起を助けるために、サイト内検索においても「サジェスト機能」「もしかして機能」は非常に有効です。

ちなみにシニアのユーザーテストを実施していると、途中でサジェスト機能に気が付いて、喜んでキーワードをクリックする様子を本当によく目にします。サジェスト機能の利用は、シニアの間でも一般的な行動になってきているように感じます。

 

ナビゲーションとしての「よくある質問」

サイトマップの代わりに、「よくある質問」を頼りにするシニアも多くいます。

「よくある質問」は、通常はサービスの内容についての質問が掲載されるページですが、サイトの利用方法に関する疑問があるときにも、こちらが参照されてしまうことがあります。

こうしたサイト内コンテンツへのナビゲーションとしての役割を考えると、以下のような点に配慮したいところです。

・サイト内主要コンテンツへ誘導する回答を増やす
・サイトマップと同じように一覧性の高いレイアウトにする
・回答数が多い場合、検索機能を用意しておく

また当然ですが、「よくある質問」を「FAQ」と書くのは避けましょう。シニアユーザーの多いサイトでは、アルファベット用語を使わないのは鉄則です。

 

『地味ナビ』の改修は、費用対効果を見込みやすい

今回注目した『地味ナビ三兄弟』の面々ですが、普段のアクセス解析においても、各種の数値を追うようにしてみてはいかがでしょうか。

もしこうしたページへのアクセスが増加傾向にあったら、新規のユーザーにはサイト構成やグローバルメニューがわかりづらいのかもしれません。またそこでの滞在時間が長ければ、情報を探すのに苦労しているのかもしれません。

『地味ナビ』の改修は、サイト全体の構成やグローバルメニュー等の改修に比べて手が付けやすく、費用対効果を見込みやすい部分です。

"そこそこ使える"シニアユーザーを逃したくなければ、ぜひ今回ご紹介したポイントを確認してみてください。

 

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