先日、Kさん(76歳女性)から携帯電話の買い替えの相談を受けた。
「お友達が、あのシュッの携帯に替えてね、私も次はそれかなあと。」
ガラケーからスマホへの買い替え相談である。
「でも、そんな高機能なモノ、使いこなせなさそう」
「お友達はできる人だから使えるけど、私は今の携帯も使いこなせないし。」
「値段も上がるんでしょう?私は今、月に2000円くらいだしねえ」
彼女は、できない&替えない理由を並べる。
しかし、相談してきたということは、
心の底ではスマホに替えたいのだと思っている。
ただ、その後押しが無い。
自分のiPhoneを取りだして説明する。
「電車の乗り換えもこれでチェックできるし、
出先で地図もチェックできる。調べ物もできる。
そして画面が大きいから見やすい。さらに、持っているとかっこいい。」
少し彼女の目が輝く。
「お友達がね、集まりがあって何かわからない事があるとソレを取りだして
さささって調べるの。かっこいいわよね。あれ、やりたいのよ。
いずれシュッの電話になるなら、少しでも若いうちに買わなくちゃよね。」
あとは彼女の中で「持つべき理由」が溜まったら、
「しゅっ、という電話」に替わるのだろう。
(実は、一つだけなかなかクリアできない問題があったので、それがクリアできたら、だ。)
モノ中心か、人中心か。
先日、とあるサービス提供者の方に
「この機能、シニア層にどうやったら使ってもらえるのでしょうか」
と、聞かれた。
モノありきから抜け出せない。
モノ・機能・サービスを使ってもらえる、のではなくて、
使いたくなるようなイイワケが必要なのだ。
その機能が「すごいでしょう?」「便利でしょう?」「欲しいでしょう?」と
思っているのは、実は、そのサービス提供者だけで、
それは、シニア層には全く伝わっていない。
「買う言い訳」をスペックと勘違いしている提供者も多く
「画面がきれい」「目が疲れない」
はたまた「料金が安い」「選べる」「便利」
などと伝わりにくい「売り文句」並べられることがある。
シニア層にとって、
便利、という言葉は、結局、何ができるか解らないし、
簡単という言葉は、「あなたは使えるから簡単だというんでしょ」
色々使えるという言葉は、「難しそう」
と思える言葉に聞こえる。
シニア層は買うきっかけを待っているのに、
買う理由を積みあげている最中なのに、
サービス提供者によく解らないことを並べられた上で
便利でしょう!とドヤ顔で言われても
「言っていることの意味が全く解らない」状態になってしまう。
買うイイワケを提示しよう!
多くのシニア層は、心のどこかで買いたいと思っている。
「自分が持つ理由」
「それを持ってワクワクしている自分」
を探している。
伝わりにくい売り文句は、買う気持ちが起きないだけでなく、
欲しい、使いたいという気持ちもどんどん減退させてしまう魔法のキーワードだ。
つまり、ここに、提供者とシニア層に大きな溝がある。
シニア層は、買う理由を求めている。
・使ったらかっこいいと思われそう
・人が持っているのを見て便利そう、自分も使えそう
・人にあげたらすっごい喜ばれそう
このあたりの「感情」を理解して、
買う理由を提示する必要があるのだと思う。