日々パソコン教室で、IT初心者やシニアの方々がパソコンやネットを使うのを見ていると、
そのメンタルモデルと実際のシステムが「合ってないな」と思うことがあります。

今回はその理由について詳しく見ていきながら、
初心者やシニアに優しいシステムについて少し考えてみようと思います。

 

「なんでもできる」Word、Excel、インターネット

パソコン教室に通う生徒さんの多くは、WordやExcelを勉強しています。

最初は文字打ちの練習から始め、
慣れてきたら町内会のチラシを作ったり、写真入りカレンダーを作ったり。

特に需要が高いのはハガキ作成ですね。
年賀状シーズンは朝から晩まで教室がいっぱいになるほどです。

Wordは、文書作成から簡単なデザイン、特殊なケース対応まで
「ひとつのソフトウェアで何でもできる」のが強みでした。

 

同様に「インターネット」も、見方によっては何でもできるソフトと言えるでしょう。
ヤフーでニュースを見て、楽天で買い物し、
明日行く観光地の天気や地図をチェックしておく、等々。

 

初心者の行動は目的まで一直線

一方で、Wordを習う生徒さんの多くは、
毎度毎度、その複雑なインタフェースに四苦八苦されています。

ツールがたくさんありすぎて、メニューを順番に切り替えていかないと
探している機能がなかなか見つからないということもしばしば。

「今年もそろそろ年賀状を作ろうか」といったころには、
去年やったことをほとんど忘れてしまっており、
またテキストを引っ張り出して1からやりなおしという具合です。

 

また初心者のインターネットの使い方として特徴的だと思うのは、
「目的や機能のみにフォーカスしている」ということです。

例えばGoogleマップを見ていても、
決して「ネットをやっている」のでなく「地図を見ている」と言うのです。

ネットショッピングをする場合も、私はただ「買い物をしたい」のであって、
「Amazonを見たい」「楽天で買いたい」のではありません。

このように、初心者の行動は目的まで一直線であることが多く、
それがどこのサイトだったか、何のソフトを使ったかということは
ほとんど意識されていないのです。

その証拠に、Yahooで検索して出てきた楽天の商品を買うのに、
Googleのアカウントを入力して「おかしい!買えない!」と言われる方も…。

 

そして買い物が終わったら、
いったんInternet Explorerの×ボタンを押してブラウザを閉じてしまいます。

これはWordでもネットでもそうなんですが、
区切り区切りでソフトを閉じてしまう傾向が高いですね。

 

目的達成に特化したアプリベースのシステム

前述した「目的への一直線の行動」を考えると、
こうした方々には細かな利用シナリオに基づいて設計された
アプリベースのシステムがよりふさわしいでしょう。

年賀状を作るときはこのアプリ、写真入りカレンダーはこのアプリ、
地図を見たいときこのアプリ、買い物はこのアプリというように。

こうなることで、「まずWordを立ち上げて…」「まずブラウザを立ち上げて…」という
初心者にはよく意味の解らないステップを省くことができます。

 

さらに、そのアプリで行うことは限られているのですから
使わない機能は削り、必要とされる機能を大きく表示できます。

「なんでもできる」ように多機能化、複雑化したインタフェースの問題も
同時に解決することができるのです。

 

初心者には難しいファイル・フォルダの取り扱い

また、初心者の方がパソコンでよくやってしまう失敗の一つが、
ファイルの保存場所を忘れてしまうということです。

デスクトップなのか、マイドキュメントなのか、USBメモリなのか。
せっかく新しいフォルダを作っても、その外に保存してしまったりということも…。

またソフトを立ち上げたあとの「開く」メニューから開くのと、
ファイルを直接ダブルクリックして開くことの区別もつきにくい方が多いです。

 

その点、iPadなどのタブレット端末であれば、
ファイルの操作は基本的には全てアプリ内で行われるので、
保存場所や開くタイミングを気にする必要はありません。

 

「なんでもできる」から「これしかできない」へ

今回は、初心者に優しいシステムを考える際のポイントを
以下のようにピックアップしてみました。

・初心者は、目的まで一直線
・初心者は、ファイルの操作が苦手
・なんでもできる大型のソフトは、インタフェースが複雑になりがち

以前、Twitter専用機の提案をしたこともありましたが、
今後、さらにITに詳しくない人々がコンピュータを使うようになった場合、
何でもできる「Office」や「インターネット全体」のような複雑なシステムは敬遠され、
やりたいこと、シナリオごとのシンプルなアプリや端末が歓迎されるでしょう。

 

それだけで目的が完結し、その作業に最適化されたインタフェースが提供されていること。

 

この実現のためには、ユーザーの目的が何なのかをしっかりと調査し、
利用シナリオをきっちりと定義した上でアプリや端末を設計することが大切です。

上記のような考えは、IT初心者、シニア対応に限ったことではありませんが、
この層を攻略したいのであれば特に意識すべきカギなのではないかと思っています。

 

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