シニア層にも徐々に浸透してきたスマートフォン。
教室でもスマートフォンのマンツーマン対応の機会があるのですが、
特にAndroid端末をお持ちの方が操作しているのを見ると、
「あぁ~、これは使いにくそうだ」と思わされるシーンが沢山あります。
こんなことが続いたのもあって、個人的にはスマホ初心者の方は
キャリアを変更してでもiPhoneを持ってほしいと考えているのですが、
今回はその理由を「学習容易性」にスポットを当てながらまとめてみたいと思います。
機種によって変わってしまうハードとインタフェース
ひとくちにAndroid端末と言っても、
メーカーや機種によってハードの仕様にバラつきがあります。
わかりやすい例だと、画面の解像度はもちろん、
メニューボタンと戻るボタンの位置が逆だったりという例も見かけます。
画像:左がGaraxy、右がXperia arc
また機種によっては独自メニューが採用されているものもあり、
家族や友人、先生などと画面の様子が違ったりするので
操作を教えてもらいにくかったり、情報収集も難しくなってしまいます。
画像:左がinfobar、中がSamsungのTwLauncher、右がdocomoのPalette UI
各種アプリについても、Androidは審査を通す必要がないため、
標準的なUIガイドラインに沿っていないものが多数存在します。
様々なアプリをダウンロードするたびに、
それぞれのルールを1から覚えるのは学習容易な環境とは言えないでしょう。
レスポンスが悪い
端末の方も、ハードキーを押した際のレスポンスが遅くて、何回も押してしまう。そしてハードキーなのにクリック感がないという意味の無さ。イライラしてしょうがない。
— satojunさん (@stj064) 4月 27, 2012
こちらはAndroid端末をお持ちの方のマンツーマンが終わった直後の感想ですが、
iPhoneと比較して、全体的にレスポンスに難があるものが多いです。
指で画面をスクロールしたときの動きがカクカクして不自然であれば、
自分が自由にコントロールしている、使いこなしている感覚にはなれません。
ボタンらしき部分をタッチしたのにすぐフィードバックが得られなければ、
連続して何度もタッチして余計にフリーズさせてしまいますし、
「あれ、さっきはできたのに、違ったかな?」などと
インタフェースを使いながら学習していく探索的な行動をも阻害してしまいます。
前者は「こんなもんか」で済みますが、
特に後者のような環境は、初心者が一人で使うには厳しいものと言えるでしょう。
乱立するプラットフォーム
ドコモのAndroid端末の初心者さんマンツーマン対応したけど、これはひどいのオンパレード。なんでマーケットがGoogleとdなんとかの二つあるのかと。iモードの亡霊か。ユーザーの事を無視してビジネス優先にしてるのはよくわかった。初心者には絶対薦めない。
— satojunさん (@stj064) 4月 27, 2012
こちらも前述したAndroidマンツーマン対応のあとのツイート。
もちろんビジネス的側面が優先されるのは当たり前なのかもしれませんが、
短期的な収益を狙うことが、長期のそれを削いでしまっているように感じました。
ホーム画面にあるアイコンを見て、その方は悩まれていました。
・dメニュー
・dマーケット(旧ドコモマーケット)
・Google Play(旧Androidマーケット)
これだけ見ても、どこに行けば必要なアプリをダウンロードできるのか、
それぞれのサービスで何ができるのかわかりません。
当然それぞれで提供されるインタフェースもバラバラで、
ユーザーはその都度、ルールやお作法を学習する必要があるのです。
かんたんにするのではなく、学びやすくすること
それでは「学習容易性」を上げるためには、どうすればよいのでしょうか?
上述のAndroidの課題から考えてみたポイントがこちらです。
・操作体系やデザインルールの一貫性が保たれている
・ユーザーのアクションに対し、すばやいフィードバックがある
・操作に失敗してもやり直しができる
・適切なラベリングから内容の想像ができる
また、初心者やシニアのために
独立した「かんたんメニュー」を用意するというアプローチもよく見かけますが、
いずれ使うことになるメインのインタフェースと別のルールを作ってしまうという点で
あまりおすすめできる方法とは言えません。
いくら機能やインタフェースをシンプルにしても、
操作体系やデザインルールに一貫性がなければ学習しにくさは変わらないのです。
また『ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針』にて、
著者のジェフ・ラスキンはこう言っています。
- うまくデザインされたヒューメイン・インタフェースでは、初心者向けと熟練者向けのサブシステムに分ける必然性が無くなるのです。
まさしくiPhoneのアイコンが並んだホーム画面やその他システムは、
初心者から熟練者までが同じUIでうまく機能しているものではないでしょうか。
iOSのお作法は、発売から5年、一貫して変わっていません。
新しいサービスでは、とかく斬新なインタフェースを採用しがちですが、
それは同時に学習容易性を下げてしまっていることを意味します。
ITに長けていない非常に多くの初心者ユーザーは、
そういった激しいデザインの移り変わりに困惑しています。
また逆に、初心者に不自然に迎合したり甘やかしたりするのもよくありません。
セオリーやガイドライン、定石を、"勇気をもって"守ることで、
初心者にもやさしい「学習容易性」の高いインタフェースを考えてはいかがでしょうか?