「先生、ひらがなのキーボードはないの?」
先日行われた『シニア向けタブレット講座』で、ある生徒さんから受けた質問です。手元のタブレットをよく見ると、そこには確かにQWERTYキーボードが表示されていました。
※画像はイメージです。参照:Flickr
なるほど、きっとまだ文字打ちに慣れていない方なんですね。
そこでキーボードを「あいうえお順」に切り替えてあげました。すると、
「違う、これじゃないんだよ~!あいうえお順でもわかるけど、なんか使いにくいんだよね…」
そこでようやく、この方は【かな入力】をしたがっているんだと気付いたのです。
実は普段のパソコン教室でも、【かな入力】を使って文章を打っているシニアを何人も見かけます。実際、どのくらいの人が使っているのでしょうか?
マミオンでは、2014年5月中旬に、60歳以上のネットユーザー(N=100)を対象とした「文字入力方式に関する簡易調査」を行ってみました。
【調査概要】
・調査方法:ネットアンケート
・調査期間:2014年5月19日(1日間)
・調査対象:60歳以上の男女
・有効回答:100人(男性64人、女性36人)
今回は、こちらの調査結果をご紹介するとともに、シニアに受け入れられやすい商品開発のヒントについて考えてみたいと思います。
ワープロ経験者は5割弱、タイプライター経験者は2割も!
まず始めに、キーボードを用いた文字入力方式に影響してくるであろう、今まで利用したことのあるオフィス機器・IT機器についておうかがいしました。
ここで注目すべきは「ワープロ専用機」と「タイプライター」の存在です。教室でも、"パソコンはわからないけどキーボードは打てる"というシニアの方がときどきいらっしゃいます。
次のグラフを見ると、ワープロの普及期は今からおよそ30年前の1980年代中ごろから。パソコンの本格的な普及期は1990年代後半ですから、キーボード自体は早くから仕事で親しみを持っていたという方も多そうです。
画像参照:ワープロの歴史
逆にほとんどキーボードを触ったことがないというシニアの方に話をうかがうと、「会社にいる時は、ワープロは全部若い子にお願いして清書してもらってたからね」とのこと。特に役職がついていた方ほど、そういう傾向があるように感じます。
【かな入力】利用者は減少しているものの、いまだ2割を占める
次に、昔と現在それぞれにおいて、キーボードでの文字入力方式をおうかがいしました。
ご覧のように、今でも【かな入力】を愛用している方はおよそ2割。そして【かな入力】から【ローマ字入力】へと途中で"改宗"したという方も、全体の2割ほどいるのがわかります。
今度はこちらの結果を、ワープロ経験者(=ワープロから始めた人)とワープロ未経験者(=パソコンから始めた人)に分けて集計をしてみました。
ここで昔の方を比較すると、ワープロから使い始めた人もパソコンから使い始めた人も、【かな入力】を選択する割合はそれほど変わりませんね。
一方で現在の方を比較してみると、ワープロから始めた人の方が、ローマ字入力への"改宗者"割合が若干高く、柔軟に乗り換えている様子がわかります。
アンケートの母数が少なく統計的な有意差があるとは言えませんが、私自身は「ワープロ≒かな入力」というイメージがあったので、ワープロ経験者の方が【かな入力】を捨てる割合が高いというのは少し意外に感じました。
一本指打法が4割。情報入力ページが大きなストレスポイントに
続いてご自身のタイピングスキルについて、【タッチタイピング】【手元を見ながら両手打ち】【手元を見ながら一本指打ち】の三段階で評価してもらいました。この結果を機器利用経験別に集計したのが次のグラフです。
ネットアンケートということもあり、タッチタイピングができる方の割合は全体で15%ほどになりました。特にタイプライター経験者はスキルが高いことがよくわかります。
その一方で、全体の4割近くの方が"一本指打法"で文字入力をしています。私たちがシニアのユーザーテストを観察していても、やはりこうした一本指打法をよく見かけます。この場合、入力スピードが非常に遅かったり、手元を見続けているため画面上の間違いに気付かなかったりと、情報入力ページが大きなストレスポイントになるのです。
シニアはもちろん、シニア以外にも喜ばれる商品作りを
シニアユーザーにとって、文字入力が思い通りにできるかどうかは、IT機器やサービスを利用する上での最初の大きなハードルです。「かな入力」が2割、「一本指打法」が4割という数値は、ここにフォーカスすることによって、十分リターンが得られる市場規模だと思います。
ちなみにこうした課題に対応することで、シニアだけではなく、特別なこだわりを持った方や、超初心者ユーザー、手指の不自由な方など、幅広い層からも支持を得ることができるでしょう。
シニアをよく観察することで、シニア以外にも喜ばれるヒントが見つかり、それが結果的にシニアに受け入れられる。ここで「シニア専用」にしてしまわないことがポイントです。
こうした視点を持つことが、「『シニア向け』より『シニア受け』」な商品開発に繋がっていくのではと思っています。