高齢になって、子どもの近くに住むために引っ越す方が周りに何人もいる。
高齢夫婦では何かと不安、子どもも心配だからという理由だ。

または、年を取ってきたから故郷に帰るという人もいる。

とあるバブル時代からあるタワーマンションでは、
元の居住者が老人ホームやケアマンションなどに引っ越すために
世代交代が進んでいるという。

子どもが巣立った後は、2人暮らしには広すぎるし
もう少し部屋が小さくいところに引っ越したいなどの
意見もあった。

一方で、住み慣れた場所を離れるのに
抵抗があるために引っ越さないという意見も聞く。

では、実際どうなのだろうか。

シニア・シルバー層の引っ越し状況を確認しようと
住民基本台帳人口移動報告と人口推計、地域別にみた高齢化から、
転出・転入・老齢人口の増減について調べた。

参照した統計

住民基本台帳人口移動報告 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

 住民基本台帳人口移動報告は、住民基本台帳に基づき、月々の国内における人口移動の状況を明らかにするもので、全国、都道府県、21大都市別の転入・転出者などの移動者…

(平成28年(2016年)分))を利用

第10表都道府県 ,年齢(5歳階級),男女別人口-総人口,日本人人口(平成28年10月1日現在)

尚、人口の増減=転入-転出、人口増減率=人口の増減分/人口として算出している。

シニア・シルバー層の東京離れ?

東京から、65才以上の人口流出が止まらない。
(とはちょっと言い過ぎか。)

65才以上の人口増減率は-0.2%
65才~74才は3,361人、75才以上でも2,771人の減少である。

65才以上の転入人数(14,591)は多いが、転出人数(20,723)を上回っている。

シニア・シルバー人口増減率を比較する

転出した人口が多くても、転入した人口が多ければ、シニア・シルバー人口は増加している。

シニア・シルバー人口が増えたトップ5県は、
埼玉県、群馬県、沖縄県、茨城県、千葉県である。

総人口について、群馬、茨城は若干減少気味だ。
しかし、シニア・シルバー層が「地元回帰」志向なのか、
はたまた、老人ホームが増えてきているのか
現段階では理由は不明であるが、転出者を転入者が上回っている。

群馬は「東京まで新幹線ですぐに行ける」「温泉がある」なども
東京からの移住としてはポイントが高いのかもしれない。

実際に、現役時代に買った別荘やマンションに移り住むという人を知っている。

沖縄県は、65才~74才の転入率がトップである。
そして75才以上が転出率最下位であるから、
シニア・シルバー人口が増加している。
暖かいところに住みたいという願望なのだろうか。

反対にシニア・シルバー層が減っているのが
東京都、熊本県、福島県、山口県、秋田県である。
熊本県、福島県は震災の影響もあるだろう。

転出は人口も多い都会から

転出人数が多いのは、東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、千葉県と大阪府を除いて首都圏が占めている。
このうち、転入数が転出数を上回るのは、神奈川県、埼玉県、千葉県である。

転出率~幸福度が高い地域は転出が少ない?


転出率(人口に対する、転出者の割合)を調べた。
65才以上人口の全体の転出率は、値が高い順に
東京都、神奈川県、奈良県、千葉県、京都府であった。

65才~74才の転出率が高いのは、東京、神奈川、千葉、埼玉、奈良。
75才以上で転出率が高いのは、東京、奈良、熊本、神奈川、京都。

転出率が高いのは、首都圏が中心になっている。

一方で
65才~74才の転出率が低いのは、富山県、北海道、新潟県、石川県、高知県。
75才以上で転出率が低いのは、沖縄県、石川県、北海道、富山県、新潟県。

沖縄県を除いて、北陸からの転出が少ない。
幸福度ランキングが高いのとなにか関係があるのだろうか。
ちなみに、幸福度ランキンが高いので有名な福井県は
全体の転出率は42位、それぞれの世代では39位であった。

また、それぞれの世代のランキングにおいては、
沖縄県は65~74才は転出率が15位だったが、75才以上になると47位に、
宮城県は65~74才は転出率が17位だったが、75才以上になると36位に
比較的若いときに他県に移動する。

山口県は65~74才は転出率が30位だったが、75才以上になると13位に、
高知県は65~74才は転出率が43位だったが、75才以上になると31位に、
岡山県は65~74才は転出率が33位だったが、75才以上になると21位に
あがるところをみると、年を取ってから他県に引っ越すようだ。

転入率~寒いところには越したくない~


65才~74才の転入率が高いのは、沖縄、東京、千葉、埼玉、鹿児島
75才以上で転入率が高いのは、埼玉、千葉、神奈川、奈良、滋賀である。

神奈川・千葉・埼玉は転出率も高いが、転入率はそれを上回っており、シニア・シルバー層が微増している。
東京は転出率が転入率を遙かに上回っているため、総合的に転出が多くなっている。
つまり、東京から埼玉・千葉・神奈川にシニア・シルバー層が流出している可能性が高い。

一方で転入率の低さは、
65才~74才が北海道、富山県、愛知県、新潟県、福井県
75才以上が秋田県、北海道、山形県、新潟県、富山県
と、
転入率が低いところを見ると「寒いところ」が挙げられる。
その中での愛知県は、理由がわからない。

また、長野・群馬はどちらもランクインしておらず、
交通の便>寒さ が移住のポイントになるようだ。

それぞれの世代のランキングでは、
沖縄県は65~74才は転入率が1位だったが、75才以上になると30位に、
島根県は65~74才は転入率が13位だったが、75才以上になると38位になっている。

一方で
愛知県は65~74才は転入率が45位だったが、75才以上になると19位に、
大阪府は65~74才は転入率が28位だったが、75才以上になると10位に
なるのを見ると、75才以上になると子どもの側に住むことが安心と考え
比較的都会に出て行くのではないだろうか。

終の棲家をどこにするのか

終の棲家をどこにするのかについて、
シニア・シルバー層と話すと盛り上がる。

元気なシニア層は「子どもには迷惑をかけたくない」という。
しかし、実際入院などを余儀なくされると
子どもとしては「できれば近く人住んで欲しい」となり、
ご自身も「子どもの側の方が安心」という気持ちもあるのだろう。

一人一人にお伺いすると、さまざまな事情が絡み合って
「引っ越す」「引っ越さない」「引っ越そうと思ったけど辞めた」などの決断につながっている。

県外に引っ越す約10万人んぽ65才以上の層、
今後、団塊世代が高齢になるにつれて
また情勢も変わっていくだろう。

少しずつでも、シニア・シルバー層の現状をお伝えできれば嬉しい。

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