「コンビニエンスストア」は、現在では多くの人の生活に欠かせない存在となりました。
こちらのグラフは、2013年のセブンイレブンの年齢層別来客割合を表しています。
データ出所:セブン&アイ・ホールディングス
これを見ると、2000年代前半から後半にかけて、最も来客が多い年齢層が、20代から50代以上に替わっているのがわかります。少し前まで若者の象徴であったコンビニは、今やシニアの生活に欠かせない重要なインフラとなっているのです。
今回は、こうしてターゲット顧客の高齢化が進んでいるコンビニ各社が、今後も増え続けることご予想されるシニア顧客に対してどういう戦略を打ち出しているのか、各社のIR資料から読み解いてみたいと思います。
「セブンイレブン」は出歩き困難なシニアをカバー
コンビニ店舗数トップ、店舗ごとの売上でも他社を凌駕している「セブンイレブン」のIR資料で注目すべきは、表紙のすぐ次のページ。何よりも先に、シニアがコンビニを利用する様子が掲載されているのです。若者よりも子供よりも先に掲載するこの姿勢から、シニアへの力の入れ具合が伝わってきます。
画像出所:セブン&アイ・ホールディングス
セブンイレブンは、「買い物支援」に特に力を入れているようです。以下の具体的な施策を説明するページには、高齢者というキーワードや、利用イメージに高齢者の姿をよく掲載しています。
画像出所:セブン&アイ・ホールディングス
その中でも極めつけは、目玉サービスである「セブンミール」。お弁当だけでなく、コンビニ商品全般を500円以上の購入で無料宅配してくれます。テレビで見かけるCMでも、シニア家庭での利用シーンが一番に出てくるというわかりやすさです。
画像出所:セブン&アイ・ホールディングス
もちろん、プライベートブランドである「セブンプレミアム」「セブンゴールド」などの個食パッケージが充実しているのもシニア顧客にとって嬉しい点なのですが、こうして「宅配サービス」を強みとして打ち出すことで、特に出歩くのが困難になってきているシニア顧客をカバーしようという戦略が見えてきます。
「ローソン」は健康志向を強める
「ローソン」は「マチのほっとステーション」と掲げるだけあって、来店顧客だけではなく、そこで働く女性や高齢者まで意識した打ち出し方をしています。
画像出所:ローソン
商品のラインナップとしては、小分けの生鮮食品、医薬品、健康志向食品等を強化することで、シニアの来店率や購入金額をアップさせています。
画像出所:ローソン
ちなみにローソンは「スマートキッチン」という宅配サービスも行っていますが、こちらは働くママがターゲットのようです。
ローソンは、シニアの求める健康を意識した商品を、近くのコンビニでも買い求められるという利便性を追求しています。また、基本的に自分で店舗に足を運べるシニアを対象としている点が、セブンイレブンと最も違うところだと感じました。
「ファミリーマート」は、協業/買収で対応
「ファミリーマート」はジェネレーションマーケティングとして、50-65歳を今後の消費の主役として捉えています。ただ現時点ではシニア対応よりも、好調な「海外展開」や、ブランディングの一環である「環境対応」の方に力を入れている印象を持ちました。
画像出所:ファミリーマート
具体的な施策としては、企業の子会社化により宅配サービスに対応したり、ドラッグストアとの協業により医薬品も取り扱うようになっています。ただ、どちらも相手企業との調整が必要なため、サービスの最適化にはまだ時間がかかりそうです。
画像出所:ファミリーマート
高齢者対応をハッキリ宣言した「サークルKサンクス」
「サークルKサンクス」は単体の資料が2011年が最後であったため、少し古い情報になりますが、冒頭からいきなり「高齢者にやさしいコンビニエンスストアを目指します」とハッキリ宣言しているのには驚きました。
画像出所:ユニーグループ・ホールディングス
資料内、具体的な施策を探しましたが、冒頭の宣言の割にあまり見つかりませんでした…。唯一それらしき記述があったのは、生鮮強化型コンビニという部分です。このあたりは、前述のローソンと同じようなアプローチと言えます。
画像出所:ユニーグループ・ホールディングス
また2013年に入って、サークルKサンクスは高齢者向けの食事宅配サービスも始めたというニュースもありました。配達作業は新聞販売店に委託するという点がユニークです。
サークルKサンクス、高齢者向け食事宅配(日本経済新聞)
着々とシニア対応を進めるコンビニ業界
ここまで、コンビニ店舗数上位4チェーンの対応をIR資料から確認してきましたが、それぞれにコンセプトが異なり、また対応の進捗具合も様々なように感じました。
現時点では、IR資料やCMでふんだんにシニアを登場させている「セブンイレブン」の力の入れようが目立つように思いました。またその一方で「ファミリーマート」のように、これまで通りのコンビニのビジネスモデルで、海外の若者を狙った事業展開を加速させるという戦略も見られたのは興味深かったです。
コンビニは環境の変化に対応するスピードが非常に速く、そして上手い業界だと思います。今回紹介した取り組みの方向性やスピード感は、ぜひメーカーやその他サービス開発においても意識したい内容ですね。