パソコン教室の日常からユーザーを理解する

本稿は、UX・ユーザビリティに関する記事を12月1日から25日までリレー投稿していくUX Japan Advent Calendar 2013への寄稿記事です。

みなさんこんにちは。マミオンの佐藤です。

UX advent Calendarに何を書こうか迷いましたが、そちらから来てくださった方なら、「UXとは何ぞや」「よりよいUXを実現するために」「海外の最新動向」等々の話はもう十分という頃ではないでしょうか?

ですので、今回は私のユーザビリティコンサルティングの礎となっている、シニアが多く通うパソコン教室での興味深い出来事やそれに基づく考察などを、当時のTwitterのつぶやきとともにご紹介させてください。現場の雰囲気が少しでも伝わり、UXやユーザビリティのヒントになれば幸いです。

 

鉄板の「病院」「葬式」「戦争」トーク

普段同年代の人と話していても、なかなか出てこないこれらの話題。最初は戸惑いましたが、皆さんサラッと口にするあたり、日常の一部であることを実感します。

 

10年なんてあっという間

教室にいると、妙に懐かしいものに遭遇する確率が高いです。皆さんモノを大事にされているのがよくわかります。

また逆に、Windows8やiPadから使い始めた方はパソコンの「デスクトップ」に違和感を持つこともあるようで、ユーザインタフェース改善を業とする自分にとっては衝撃でした。

 

何を勉強したらホームページを自由に使えるようになるんでしょうか?

最近では、ネットを使うシニアも増えてきました。積極的に使おうとする人もいれば、様々な手続き上避けられないという場合も。

観察をしていると、初心者にとってハードルの高いサイトもまだまだ多く、そうした状況を制作者はあまり把握できていないように思います。「ホームページがうまく使えなかったのは自分が悪いんだ」とユーザーに思わせてしまうなんて、サイト制作側からしたら本当に申し訳ないことですよね。

 

アカウント管理が苦手

シニアがネットを使えない理由の1つが、アカウント問題です。パソコンを立ち上げたらWindowsのアカウント、ヤフーのメールを見るときにはまた別のアカウント、ショッピングをしたいときにはまたまた別のアカウント。

サービスによってアカウントを使い分けるという意識があまりないようで、メモをとっていないことが多いです。そしてとったとしても失くしてしまったり、転記ミスがあったりと、これがこじれると地獄絵図になります…。

 

パソコンは「覚える」もの?

特にITが苦手なシニアにとっては、パソコンの操作は「覚える」ものになってしまっています。細かい手順を一生懸命メモしている人をよく見かけますが、状況が少しでも変わると全くのお手上げになってしまい、なかなか勉強が進まない場合も多いです。

本当は、自分で試行錯誤しながら学んでもらえるのが一番よいのですが、「不用意に触るとパソコンが壊れる」という意識が邪魔しているせいか、それもままなりません。

 

初心者用と熟達者用のUIを分けるのは愚の骨頂

「パソコンが苦手な人のためには、易しい画面を別に用意すればいいのでは?」

これはサイト制作をしている方からよく尋ねられる質問ですが、個人的にはあまり賛同できません。まずそうしたユーザーは、自分で初心者と認識して画面に切り替えることはしませんし、易しい画面を使ううちに成長して普通の画面を使うようになるということもありませんね。

 

まとめ:これからますます重要になるシニアユーザーの理解

今年、ユーザビリティ界の重鎮であるニールセン・ノーマン・グループは高齢者ユーザーのウェブサイト利用に関するレポートを発行しました。購入して読んでみたところ、マミオンで販売しているウェブサイトのシニア対応ガイドラインとかなり似た内容でした。日本と海外でも、どうやらそれほど状況に差はないようですね。

 

これからの商品・サービス設計においては、増え続けるシニアの存在を避けて通ることはできません。私がマミオンで働こうとした理由の一つが、そうしたユーザーを肌身で理解するため、「どれだけ近くに寄り添うことができるか」という観点です。

こうした考えに至ったのは、以前、知人とTwitter上で交わした会話の影響も大きいと思います。UX、ユーザビリティについて考え直すきっかけになりました。

HCD的なエピソードその1(Togetter)

うちのおばあちゃんは、毎日韓流ドラマを予約録画して、3話ずつDVDに焼いてる。これは私が究極に簡単な手順書を作ってあげたからで、これのおかげで朝起きて新聞見るのが楽しいし、毎日も楽しいのって言ってくれてる。

(中略)

当時は大学生で、そんな理想的な流れとかUXがどうとかなんてまったく知らなかったけど、ほんとに使えるようになって喜んでもらいたいと思ったら、自然にそういう手順をやるんだね。

出典:Togetter

今回ご紹介したつぶやきから、「自分と違う世代について、まだまだ知らないことがたくさんあるんだ」と少しでも感じ、UX・ユーザビリティの”向こう側”にも興味を持っていただければ嬉しく思います。