ブログが流行った時、教室でも多くの方にブログを薦めた。
しかし、続けている方はその内、1,2名で
後は「書くことがない」「ネタがない」と辞めていってしまった。
文字で自分の考えを表現するというのはとても難しい。
大半の人は意見の「発信」に慣れていない。
下記グラフを見ていただくと解るが(平成23年通信動向調査より加工)
ウェブの閲覧は60歳代で60%弱であるが、発信者(ホームページ、ブログの開設者)は10%に満たない。
各年代の発信力(ブログによる発信/個人・法人ウェブの閲覧)を見てみると
どの層も10%以上の発信者がいる。(但し、80歳代を除く)
つまり、書きたい層がどの年代にも一定しており、
書きたい人は書くし、書かない人は、書くツールがあっても書かない。
そして、大半の人は、書かない。
書ける人の「意見」が意見としてまとめられてしまう
私は学生時代に雑誌社(主に専門誌)の調査部で
読者調査の自由意見欄をまとめるというバイトをしていた。
(その他にもいろいろ業務はあったが、自由意見欄まとめは私の楽しみの一つだった)
殆どの方は自由意見欄には記入しないのだが、
一方でご丁寧にA4のレポート用紙を貼り付けてまで書いてくださる方もいる。
そして、それを「挙がってきた意見」としてまとめる。
東京都、30歳代、女性。
特にないと回答した人は、自由意見には反映しない。
無言は、意見として存在しない。
「書ける人」の意見だけが「自由意見」として認められてしまう。
多くの人は、意見の発信に慣れていないのだ。
色々思っていることはある。毎日話している。
だが、書けない。
書かない人は、書けない人でもある。
意見があっても、文字にできない。やらないから、ますますできない。
そして、アンケートでは「文字にならない」声は伝わらない
ヒアリング調査をお薦めする理由
ここで、新潟のおせんべい屋さんが東京の女子中学生にヒット商品づくりを頼んだらとんでもないことが起こった!?という本からの引用。
たとえば、文字では「飲みません」と書かれる場合でも、言葉で「飲むわけないじゃん」と聞く場合のニュアンスと、「あまり飲まないかなあ」と聞く場合のニュアンスは「飲まない」という意味は同じですが、拒絶感に大きな開きがありますよね。
(中略)
生徒さんたちが「えっ」という反応をしたんです。
ほら、今、ここで文字にするとただの「えっ」なんですが、その前のめり感、食いつき感といったら…。その場にいないとわからない「えっ」の温度でした。
生の声を私が大切にしている理由が、上記引用文ですっきり言い表された気がする。
ヒアリング調査というのは生の声を聞き出すための調査だ。
躊躇いや、憧れ、不安などが言葉以上の態度で表現される。
大半の「書けない人」の意見を引き出すために
コミュニケーションをとりながら、感情を引っ張り出し
次のステップの足掛かりにする。
「うーん、なんていうのかな、持っている人を羨ましいとは思うんだけどね。私には使いこなせないというか。だから、今はまだいらないかな」
こういう意見が、アンケート調査だけだと「今は必要ありません」で終わってしまう。
だが、私たちは、そういう「書けない普通の人」の意見も尊重したい。
シニア層のヒアリングは長い。
だが、ご自身たちが「うまくまとめられない意見」の中にこそ
シニアビジネスのヒントが隠されているのだと思う。
アンケート調査による数字は全体を見るのにとても重要だ。
だが、そこに現れない「本音」を探ることも、とても重要だ。