「イノベーター理論」および「キャズム理論」。
マーケティングに関わる方ならよくご存知の用語だと思いますが、今回は特に日米シニア層におけるWebサービスの利用率データから、それぞれのサービスがイノベーター理論でいうどの段階まで来ているのか、あらためて確認してみたいと思います。
イノベーター理論とは、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授が1962年、『Diffusion of Innovations』(邦題『イノベーション普及学』)で提唱した理論です。
たとえば液晶テレビ、たとえばiPadなどの新しい商品が市場に投入された際に、消費者のその商品購入への態度により、社会を構成するメンバーを5つのグループへと分類したものです。
画像参照:イノベーター理論とキャズム理論 | マーケティングis.jp
アメリカのシニアショッピングユーザーはおよそ35%
先日公開になったTechCrunch Japanの記事によると、アメリカの65歳以上のインターネット利用動向は、以下のような状況とのことです。
- 65歳以上の60%、約2000万人がインターネットを利用して友だちや家族とコミュニケーションし、人生を楽しんでいる
- インターネットを利用する人の90%以上がメールを使う
- 59%が過去3か月内に何かを買ったことがある
- 49%がFacebookのアカウントを持っている
- 46%が(主にメールで)写真を送受している
- ゲームをしている人は、44%だ
アメリカでは全体の60%がネットを利用し、その中の60%がネットショッピングを楽しんでいるようなので、全体に対する利用率は60%×60%≒35%ですね。3人に1人というところでしょうか。
また特筆すべきなのが、「49%がFacebookのアカウントを持っている」という記述です。全体で計算すると30%の人がFacebookを使っているという計算になります。これ、日本の20代より利用率が高いのではないでしょうか…?
日本のシニアインターネットユーザーは40%
一方で最近の日本の状況はどうでしょうか?
まずは総務省の昨年の通信利用動向調査から、全体に対するインターネット利用率を見てみましょう。
- 65-69歳:60.9%
- 70-79歳:42.6%
- 80歳以上:14.3%
- ※65歳以上 計:39.8%
上のグラフでは年代別の集計になっていますが、元の調査データを当たると、65歳以上の合計ではおよそ40%という数値が出てきました。パソコン教室にいる実感としても、こんなものだろうと思います。
ショッピングとコミュニティの利用率に大きな差
そしてインターネットを使っている人のうちで、どのくらいの割合がショッピングやコミュニティサービスを使っているのでしょうか?
ここでは2011年6月のgooリサーチの調査と、2012年3月のIMJモバイルの調査から、様々なWebサービスの利用率を確認してみましょう。
65歳以上のインターネットユーザーにおいて…
- オンラインショッピング:67.8%
- コミュニティサイト(mixi、Facebookなど):9.0%
- オンラインゲーム:7.5%
60-80歳のインターネットユーザーにおいて…
- オンラインショッピング:65.8%
- コミュニティサイト(mixi、Facebookなど):9.7%
- オンラインゲーム:10.0%
どちらの調査でも、ショッピングが65%、コミュニティ(Facebook)が10%、オンラインゲームが10%と、ほとんど同じ傾向が読み取れました。IMJの調査の方が少し数値が高いのは、60-64歳の比較的アクティブな層が加算されているからでしょう。
キャズムを越えたショッピングと、これから期待のFacebook
以上の日本のデータを掛け合わせ、シニア層全体に対する各サービスの利用率をグラフに描いたものがこちらです。
いかがでしょうか?
日本のシニア層全体では、ネットショッピングは4人に1人、Facebookなどのコミュニティサービスは25人に1人という割合が出てきました。アメリカと比べると、ショッピング利用率は検討しているものの、コミュニティサービスは7倍の開きがあります。
こうして比較してみると、まだまだ日本のシニア層におけるインターネット利用には、伸びしろがたくさんあるんだなと思わされます。
ちなみにパソコン教室の生徒さんで「私インターネットやってるよ!」という方によくよく話を聞いてみると、「Yahooでニュースを見ている」とか「電子メールを使っている」というパターンがとても多いです。
Facebookを使っているのが25人に1人というデータは、なんとなくパソコン教室での実感と近い数値だなとも思います。かなりレアですね。
イノベーター理論にあてはめてみると、Facebookの4%というのは「アーリーアダプター」段階に入ったあたり、ショッピングの26%というのは、キャズムの16%を超えて「アーリーマジョリティ」の参入真っ最中という感じですね!
またこれを20代で考えてみると、Facebookについてはおよそ30%でキャズム越え、ショッピングについてはおよそ65%で「レイトマジョリティ」が使う段階と言えます。これもほぼ皆さんの実感と合うのではないでしょうか?
普及してきたショッピングサイト、コミュニティサイトのシニア利用には、ユーザビリティの考慮が不可欠です。こうした領域でのビジネスを考えている方は、ぜひマミオンにご相談ください。