2014年11月上旬、マミオンが監修を担当した書籍が、一般発売となりました。
『シニアが使いやすいウェブサイトの基本ルール』(グラフィック社編集、マミオン社&トライベックストラテジー社監修)
目次
Chapter1 基本編(監修:マミオン社)
おさえるべきポイントを体系立てて紹介。
1.レイアウトの基本
2.ナビゲーション、ボタンに関する基本
3.リンクに関する基本
4.検索機能に関する基本
5.入力フォームに関する基本
6.その他ルール
Chapter2 実例編(監修:トライベック・ストラテジー社)
シニアが見てもやさしく作られている実際の好例を45サイト、ラインナップ。
・ショッピングサイト
・旅行・レジャー
・生命保険・銀行
・サービス系
・運輸(電鉄・航空)
・メーカー/ その他
巻末付録
・シニアにもやさしいウェブサイトに仕上げるためのチェック項目
・シニア向けのデザインやビジネスを学ぶための資料
この本の見どころ
マミオンが把握している限り、シニア向けサイトの具体的なガイドラインはこれまで世界に2つしかありませんでした。
・ユーザーが迷わないウェブサイト設計のためのガイドライン(マミオン有限会社)
・Senior Citizens (Ages 65 and older) on the Web(Nielsen Norman Group)
前者は手前味噌ながら弊社のコンテンツで税別8000円、後者はユーザビリティ界隈で知らない人はいないというアメリカのユーザビリティコンサルティングの権威とも言える会社によるレポートで125ドルで販売されています。
ちなみにこの二つ、実は重なる部分が非常に多いのです。マミオンで後者のレポートを購入して確認しましたが、およそ70%ほどのシンクロ率でしょうか。日本も海外も、それほどシニアの実情は変わらないのだなと感じました。
ニールセン・ノーマングループの高齢者ユーザーテストのレポートを読んでいるが、結果の傾向とか特徴とか、あるある過ぎてヤバい。うちの出してるガイドラインを参考にしてるんじゃないかと思うくらい。訪問調査するとお茶と焼き菓子を出してくれたり、雑談のための時間が必要ってところでワロタ。
— satojun (@stj064) 2013, 6月 20
今回の書籍のChapter1「基本編」は、この前者のガイドラインをベースに作成しています。世界の権威とそれほど変わらない知見が、税込2700円というお手頃な価格で入手できること。これがまずポイントの1点目です。
そしてもう1つのポイントが、上述のマミオンの知見だけではなく、各種ユーザビリティランキングの発表で有名なトライベック・ストラテジー株式会社様、および高齢者や障碍者の技術利用に詳しい株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ様が監修した「実例編」も一緒に購入できること。
ちなみにこの3社間でもこれまでの実績や背景が少しずつ異なるため、必ずしもガイドラインが一致していない部分があることも興味深いところです。私たちが読んでも勉強になるところが多い1冊となっています。
ネット上の感想
書籍発売当初より、Twitterでは以下のような反応をいただいています。
これはマストバイだな… → シニアが使いやすいウェブサイトの基本ルール: トライベック・ストラテジー株式会社, マミオン有限会社, グラフィック社編集部: 本 //t.co/DwUB2UJ6dm
— 大月 茂樹 (@ohtsuki2843) 2014, 11月 4
ほぉ~ この目線の書籍は見たことないな・・・ちょっと気になる>>シニアが使いやすいウェブサイトの基本ルール //t.co/4OH6cQyCP7
— ちゃちゃ丸(ワニ吉) (@as_chachamaru) 2014, 11月 4
マミオンが監修に関わっているみたいなのでたぶん買い。
おすすめのデザイン本「シニアが使いやすいウェブサイトの基本ルール」 | DesignWorks
//t.co/ce3XRIcSM2
— Teruichi (@teruichi81) 2014, 11月 5
気になる1冊。書店であったら手に取ってみよう。おすすめのデザイン本「シニアが使いやすいウェブサイトの基本ルール」 | DesignWorks //t.co/1NvQFmNdaS
— 井上和俊 (@inouekazutoshi) 2014, 11月 3
『高齢化社会』とはくちにするけどボクらは実はまったくわかってない。ポチった。|『シニアが使いやすいウェブサイトの基本ルール』 トライベック・ストラテジー株式会社//t.co/HTRAYPUdn0
— Joe ISHIYAMA(石山 城) (@joe_i) 2014, 11月 5
「シニアが使いやすいウェブサイトの基本ルール」読了。実例がいっぱい載ってて参考になった。時間かけてじっくり再読しよう。シニア向けでサイト作ってみようかな。 #シニア
— カンベ アキラ@北海道コンシェルジュ (@hokkaido_con) 2014, 11月 18
またいくつかのブログでレビューもいただくようになりましたので、一例をご紹介します。
「シニア向け」と書かれている部分もありますが、極めて重要なことばかりですので、ビジュアル面での細工に走りがちな駆け出しのウェブデザイナーさんなどは、ぜひ読んでおくとよいと思われます。
(中略)
「シニア」という言葉にだまされて私には関係ない本と考える人もいるのではないかと思ったりしますが、シンプルでよいユーザビリティの本だと思います。
いろいろなデバイスでの閲覧を考えるとデザイナーはぜひとも押さえておきたい本の1つです。
参照:フォルトゥナ ブログ
基本編でシニアの利用特性につき「へぇ」と思ったくだりが幾つかあった
一方で、編集としてもう少しというご意見も…。
気になったのが、基本編と実例編のあいだにある齟齬。
この書籍で話されていることは引用元がない場合が多いので説得力に欠ける気がします。
気がするのですが言われてみると「確かにそうかも」というのも多いのでそういうところをピックアップしていきます。
参照:ma-san.org
こちら前者については、監修会社が分かれている影響が出ているようです。複数の見方ができる内容については、状況を見ながら調整が必要になりそうです。
また後者については、基本的にどちらの章も定性調査の結果や教室での観察結果をベースにした内容であるため、数値的な裏付けは弱いところです。ただこうした知見を織り交ぜたコンサルティング結果をA/Bテストにかけたところ、数%~数十%の改善効果が出ているというクライアント様からの声も複数いただいています。
余談:Chapter1はこんな流れで作りました
マミオンではこれまで、パソコン教室やシニアのユーザーテストで得られた知見を『ユーザーが迷わないウェブサイト設計のためのガイドライン』として、自社サイトにて販売してきました。
こちらはおかげさまで作成から5年が経った現在でもコンスタントにご注文をいただく人気コンテンツなのですが、一方で近年のシニアのITリテラシの向上、ネット環境やトレンドの変化などのアップデートが十分にかけられておらず、掲載事例も古くなってきているのが悩みでした。
そんなときにグラフィック社様よりタイミングよくお声掛けいただいのが、今回の書籍化企画の始まりです。
スタートは2014年の3月。まず取り掛かったのが、第1章の骨子作成です。前述の『ガイドライン』をベースに、編集とライターの方、そして弊社の森と佐藤で打合せを重ねていきます。
そして5月、固まった骨子をもとに、各トピックごとに最近のパソコン教室の様子やユーザーテストによる知見をさらに加えるための「取材」を受け、コンテンツを太らせていきました。
7月になると、ライターの方が整えた文章や画像を校正する作業に入ります。ここで大変だったのが、事例として掲載するウェブサイトの選定です。改めて各ポイントごとに一番ふさわしいものを探していくのは、突き詰めればキリがない作業なので、手間と根気が必要でした。候補として選んだのは100サイト以上、150枚近くの画像を用意しました。
今回、第1章ではできるだけシニアの方が利用する可能性の高いサイトを中心に選定を行いました。今後シニアの利用者が増えるであろうジャンルや、パソコン教室でリアルに使い方を聞かれたサイトなどが中心となっています。
しかしせっかく良い事例が見つかったとしても、掲載許可が下りずに諦めざるをえないこともしばしば…。編集の方が該当企業の方に確認をしてくださったのですが、どうしても代案が見つからない場合は、わざわざイラストでイメージを作ってくださいました。
そして9月。ようやく第1弾のゲラが上がってきました。実際によく目にする本のようにページとしてレイアウトされているのを見ると、「いよいよ本になるんだな!」と気分が盛り上がります。ただしここでもまだ掲載NGの画像など、ところどころに穴が空いていたりします。本作りって、結構ギリギリまで慌ただしいものなんですね…。
10月、ようやく最終稿が上がり、あとは印刷を待つだけに。ここで装丁を見せていただきました。表紙イラストは、リクルートやマガジンハウス等のメディアでよく見かける岡田丈さんによるもの。シニアが困っている様子がやさしいタッチで描かれていて、雰囲気が伝わってきます。
11月上旬、いよいよ販売開始です。販売に先駆けて見本を会社に送っていただきましたが、やはり一般書籍として製本されたものを手にするのは感慨深いものがあります。
書籍は全国の書店でもご購入いただけます。シニアユーザーの多いサイト制作に携わっている方は、ぜひお手に取ってみてください。