先日、腹痛になり、近所のお医者様に行った。
大病院ではない、昔ながらの町医者である。
待合室には高齢者がいっぱいいらした。
「○○さん、どうしました?」と看護婦さんが声をかける。
「うーん、なんとなくぅ」とご高齢の患者さんが答える。
そこから、手慣れた看護婦さんの質問コーナーが展開される。
「体がだるいことはありますか」など、
患者さんの「なんとなく」の原因を突き詰めようとする。
上から目線で聞きまくるでもなく、話を聞くだけでなく
「コミュニケーション」&「ヒアリング」になっている姿を見て
シニア層へのヒアリング3つのポイントを感じたので記しておく。
一、質問の意図が伝わるように、質問を用意する
質問の表現を間違えると、シニア層は延々と違うことをしゃべることがある。
「いつもお薬何飲んでますか?」と若い看護婦さんが問えば
「僕は3年前からなんたらというお薬を飲み、それを1年前に辞めて…」
などという話が延々と続く。
そこに、にっこりとベテラン看護婦さんが前に出る。
「○○さん、よく覚えていらっしゃいますね、
ところで今日はこのお薬出そうと思うのですが、
現在血液がサラサラになる薬を飲んでるかどうかを教えてくださいね」
質問をフォーカスすることで、答えが出やすくなる。
質問をする人が、質問を尖らせて、
相手がうまく答えが出しやすいように
かつ、質問意図が伝わるようにしなくてはいけない。
二、相手の言葉に惑わされない
「先生、盲腸が痛いんです」
実はこれ、私が思い込んでいた腹痛の原因。
今年の3月に盲腸を散らしたので、
お腹が痛い原因が盲腸かなあと思ったが故の受診。
お腹を押されて「痛い?」などといろいろ聞かれたが
痛い気もするが、痛くない気もする。でも痛い気がする。特に盲腸。
結局、盲腸の痛みは妄想だったとの判断が下されたわけだが、
(※盲腸と妄想で韻を踏んでいるツモリ)
自分のことなのに、自分のことを表現するのは難しい。
同じ部屋にいたシニア層も色々なことを訴えていた。
新人の看護婦さんはそれに右往左往してしまうが、
先生は慣れたもので、それが本当かどうか、質問したり
触診することで、真実を当てる。
○○って言ってました。というのは事実に過ぎない。
本当は、その奥に、シニア層の思いや問題点があることが多い。
だから、アンケートの数値だけでは、リアルなシニア層は見えてこないのだ。
アンケート実施後にヒアリングを行わなくてはいけない理由はここにある。
三、本人も言われて気づくことがある
最初に出た「なんとなく」来院した方、
診察の後に、先生が
「ん、胃腸の調子が悪いんじゃない?」と聞くと
「そうかもしれない。うん、そうだったことを忘れてた」と仰った。
(小さい病院なので、診療の声はよく聞こえる。特にシニア層は声が大きいので。)
なんとなく、は言葉にできない「なんとなく具合が悪い」で当たっており、
さらに、先生は、患者さんの言葉を補完して、推測・提案する。
それによって患者さんは気づくこともある。
「そう、それが言いたかったのよ」
年を取ることにより、アレアレも増え、思ったように言葉を操れなくなる。
そうすると、時折、「そういう気持ちだったか」など、水を向けることで
相手の思考、言葉の指針となることがある。
ヒアリングは新サービス・新商品に欠かせない
先日、「失敗から学ぶ」というテーマの研究会に出席させていただいていたのだが
失敗の原因の一つに「顧客不在」というのが挙がった。
アンケートに出たのだから、いいものだから、きっと売れるだろうという
慢心が失敗を招いてしまう。
ヒアリングはおしゃべりでも、話を聞くだけでもない。
アンケートのデータには表れない
相手の考えや行動の裏にある背景を知り、
それを活かすことがヒアリングの目的だ。
是非、町のお医者様の極意を会得し、
ヒアリングを通じて良いサービスや商品、広告などに役立てていただければと思う。
シニア層に対するヒアリング調査にご興味をお持ちいただけたらご連絡いただければと思います。
写真はペイレスイメージのものを利用しています。