先日、とある「初心者向け」ソフトウェアの講習を行った。
楽しく講義を行い、受講生にもご評価いただけた。

が、受講生の最終的な結論は
「そのソフトは使わない」ということでまとまった。

ご本人たちの「利用しないと決めた」理由はいろいろだが
(ここでは少し濁させて頂くが・・・)
その決定の裏には、「初心者向け」という言葉に隠された
問題があると感じられた。

1. ユーザーの自己認識問題

初心者向けと銘打たれた製品には二つの課題がある。

ユーザーにとって「初心者」が
どこからどこまでを指すのかわかっていないのが問題だ。
自分自身は初心者だと思う、結構使えるという自己評価程あてにならないものはない。

そのあてにならない自己評価に基づいて
「初心者向け製品」に対してそれぞれの期待を抱く。

その期待はユーザーの真の「初心者レベル」によって変わる。

1-1. 本当に初めてパソコンを使う、リアル初心者

その製品だけではなく、そこから出力されるアウトプットにも不慣れな場合がある。
アウトプットのイメージが出来ない、専門用語?に慣れていない
などの問題点がある。

多くのソフトウェアが対象としている層はココの層のことが多い。

しかし、ここの層は、本当に右も左もわからないが、基本を学ぶことはない。
「初心者OK」と銘打ってある製品を手に取って「初心者でもできるというからぁ」と購入する。

しかし、マニュアルの「クリック」「○○バー」などの基本用語を見て
「初心者には難しすぎる!!!」とパニックを起こす。

そして、次の「初心者向け製品」を探す。

1年後には、
・やめている
・永遠の初心者を続けている(困ると誰かにやってもらう)
・どこかに通って楽しくなっている
という3パターンに分かれる。

1-2. 従来のソフトで難しいと感じていた層

従来のソフトで操作が難しいと感じている。
前述の1年後の2番目に当る。

操作が難しいのは、自分が初心者だからだと考えており、
出来ないもどかしさを感じているが、あまり勉強しようとはしていない。
しかし、人に聞くと笑われたり面倒くさがられたりするので
かんたんであればやりたいなあと思っている。
インターネットでYahoo!を見る事くらいできる。

そして、売り場で「初心者向け」という文字を見て
「これなら今のもどかしさが解決できる!」と思い込んでしまう。

ところが、多くの「初心者向け」は機能限定であったり
従来使っていて「出来ないもどかしさ」を感じていたことが
もっとできなかったりするため、
「物足りない!」「初心者向けだから買ったのにやりたいことができない!」
となる。

2. 提供者側の問題

今までユーザーサイドの「初心者」評価に基づいて、
「初心者向け製品」の期待値について書いた。

今度は、提供者側の心構え/製品の向かい方について書いてみよう。

2-1. ユーザーを把握できていない

パソコンが使えるようになった人が多い現在、
「全く使ったことがない」層というのはかなり少なくなった。

今でも全く使ったことがないという層は、
「これからも使う気持ちがない」ことが多い。もちろん例外もいるが。

今初心者という言葉に飛びつく人は
・本当に初心者(機械が嫌い・誰か今までやってくれている人がいた)
・昔あきらめたが、もう一度やりたくなった

という人なのにもかかわらず、
製品の機能はどっちつかずになってしまっている、
残念なことが多い。

昔の初心者のイメージから抜けられず
今ではいない人を相手にしている感がある。

2-2. ユーザーの「怖い」を理解していない

常々思うが、使える人にとっての「かんたん」と
使えない人にとっての「かんたん」は、大きく違う。

タイヤとダイヤのようなものだ。(一文字違えば大きく違う)

初心者ユーザーは、使える人が思っている以上に
不安を感じている。
その気持ちをしっかり理解して、
ユーザーに安心感を与えることが、
リピートにつながるのだと思う。

私は、製品開発者やマーケティングの担当者の方は
是非ともできない人に教えるということをしていただきたいと思っている。

質問を受けると、どんなことが不安になっているかわかるし、
自分が勝手に「これが不安なんじゃないか」と思っていることが
ユーザーからずれていることがよく解る。
私もいまだにたくさんの発見がある。

初心者・シニア層にとっていったい何が不安なのか
そして、なぜそれをやりたいと思ったのか。
それをきちんと、近くで把握する必要がある。

誰のための商品?

楽しそうなことは、不安を凌駕するし
不安は、便利を凌駕する。
便利であっても使いづらければ使い続けないが
使いづらいが周りがみんなやっていればやるようにもなる。

良い商品が売れるとは限らないし
シニアっぽいから/シニアっぽくないから
受け入れられるとも限らない。

そして、初心者向けの製品がキャッチで売れても
結局使えなければ、
下手をすると不満を引き起こしかねない。

売り文句を届けたい人は誰なのか、
売り文句が本当に届いているのか、
その届けたい人に親切な作りになっているのか。

皆かんたんというけど
どれが一番かんたんなの?と質問を受けることもある。
そのかんたんが本当に簡単なのか、
そのユーザーさんの楽しいを引き出せるのか。

これからの高齢化社会をワクワクにするためには
この辺をじっくりじっくり考えていく必要がある。

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